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2021年2月 2日 (火)

新型コロナウイルス患者の自宅や施設での看取り

最近、神戸市でも新型コロナウイルス感染症の患者の自宅待機期間が長くなりました。私は毎日、がん終末期や、高齢の脆弱な患者の在宅療養を診療しています。ついに、本人、家族の求めに応じて、病院に入院させずに、新型コロナウイルス感染の陽性者の死亡をそのまま自宅で診療せざるを得ない状況になりました。

予後2週間未満と分かっている患者を、どの病院に搬送したら良いのか、それは保健所の考えることですが、もう自分で最後まで診た方が、いや診るしかないのかと腹を括りました。看病する家族ももうここまできたら最期までと、自分の二次感染よりも、最期の数日を共に過ごせないことの方がよほど苦痛だとはっきりと明言する方もいます。

家族と医療者の二次感染を予防するために、どうしたらよいのかと迷いながらも、自分の行った実践は、自分一人だけで診療し他の医療者を近づけないこと、家族への感染対策を実地で指導することで、保健所と連絡を取り合いながら、そのまま自宅で看取りをすることもありました。

幸い、2020年の春とは違い、マスク、ガウン、アルコールなど物資は直ぐに手に入ります。またゾーニングを含め、対策の方法もよく知られまた資料も増えてきました。

診療に関わっている高齢者施設は以前から2ヶ所、施設の管理者の一人とは、「もう最大限の努力をしても、入居者の新型コロナウイルス感染は100%では防げない、もしも感染したらあきらめよう」という話を予め、少なくとも家族にはした方が良いのではないかと話し始めています。こんな状況になるとは思いませんでしたが、これも現実です。ある程度期間があり長く診療している(半年以上くらいか)患者や家族には、人によってはもう新型コロナウイルスに感染したら、自宅であきらめて最期を迎えるかといった話しも出てきています。

さて、この論文(スウェーデンの医学論文)、2020年に読んだときは、大胆な考察に唖然としましたが、私の診療地域にも津波が遅れて到達しただけでした。

"著者の大胆な考察ですが、脆弱な高齢者を入院させ、高流量酸素や人工呼吸器をICUで行うことは、死の過程を長引かせて、結局終末期の苦痛をより強くしてしまう。施設の患者は高齢で脆弱、症状が軽く、緩和が可能な段階で早い経過で死亡している"

高齢、併存疾患で命の線引きをすることを、私も2019年まではあんなに反対していたのに、最早この論文の大胆な考察と同じことを考えている自分がいます。テレビでやっている「自宅療養中の新型コロナウイルス感染症の患者」とは、無治療で保健所だけから連絡をもらっている患者にもなれていない病人なのではないでしょうか。

医療者のケアも治療も受けられず、パルスオキシメータだけと印刷物、定期的な電話だけを頼りに不安で毎日を過ごしている患者や家族を想像すると、医療者の役割もみえてきます。今までは、期間病院と保健所に任せていましたが、たとえ数は少なくとも、新型コロナウイルス感染の患者を、自分も診療すると、私も一歩踏み出すことになったのです。実際に自宅で新型コロナウイルス感染症の患者を診療している医療者の方々の知見や実際の活動や注目しています。

1) Strang P, Bergström J, Lundström S. Symptom Relief Is Possible in Elderly Dying COVID-19 Patients: A National Register Study. J Palliat Med. 2020 Jul 31.

 

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