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2020年6月29日 (月)

新型コロナウイルスの感染のクラスター発生の一つ前のステップは何か考えよう。


自分のブログで、オーケストラの演奏会についてどう臨むかを改訂しながら書いています。「楽しみにしていた演奏会でも、人に誘われていた演奏会でも、義理がある演奏会でも、体調の不安があれば、断る勇気をもちましょう」みたいなことを書きました。(読みたい人は、こちら

考えていたのですが、どうしてライブハウスとか、接待を伴う飲食店(キャバクラとかラウンジとか)でクラスター発生するのでしょうか。

そのような場所で活動する方々を、感染者の集団のように危険視する偏見、差別は良くない。だからこそその一歩前を考えたいのです。働く人なのか、客なのか。働く人達だけを、新型コロナウイルスをまき散らしていると考えるのは早計です。

その環境(要するにハコ)が、感染のリスクを高める、ここまではよく分かりますし、再現性もあるし、科学的に根拠も分かります。でもその手前、なぜ感染者がそのような環境に、入って来てしまうのかと言うことをよく考えないと、本当の予防にはならないと思うのです。
 これは僕の考えですが、「誘いに断れない」か「病気しても休めない」か「少々の体調不安ならいつも通り生活する」が感染のリスクを高める要因なんだと思うのです。

「楽しみにしすぎて無理をする」

ライブハウスで楽しみにしているライブがある、でもちょっと体調に不安があるけど、このチャンスを逃すと次はいつか分からない、ええい大丈夫!行ってしまえ!これは風邪ひきではなく、昨日おなかを出して寝たからだと、起きている問題を軽視するバイアス。

 「仕事を休めないから無理をする」

今夜も仕事に行かないと生活が立ちゆかない、そんなに簡単に仕事を休めない。「明日休みます」ならまだしも、「今日休みます、すんません」とは言えない。24時間戦えますか! 明日は栄養ドリンクか、風邪薬でバッチリ治して、出勤だ。出勤したら、一杯やらなきゃ帰れないだろと、感染していても軽い症状なら、そのままいつも通り行動してしまう。

 「アルコールのせいで抑制が効かなくなる」

いやー、一杯飲んで気持ちが良い! いやー、このままでは帰れんでしょ。もう一軒もう一軒、いやー、いいこんころもち(落語の一節)と、ずるずるとアルコールが入って抑制が効かないまま、風邪気味の人も次の狭い店に行く。「風邪気味だけど、酒を飲んでアルコール消毒や!」とか豪語してついつい。酔客相手に、「今夜はお引き取り下さい」と、体調が悪そうな客を店は断れない、いや、そもそも酔ってしまうと、顔も赤いし体調不良なのか、ただ酔っているのか見抜けなくなる。

 「キッパリと断ることができない」

本当は帰りたいんだけど、誘われたら帰れない。少しだけなら大丈夫、うん、本当に大丈夫。お付き合いして、ね、きっと一杯だけ30分だけだよねと断り切れずにそのまま次の狭い店に行く。zoom飲み会も断れずに、新しいタイプのパワハラを受ける人も多い中、断れない状況と関係が次の感染を生む。「なに?!体調が悪い?オレなんか就職してからこの方、ずっと体調悪いわ!不調なまま結果を出すのがプロだろ」とよく分からない事を上司に言われ断りきれなくなる。

こういう行動と心理、シナリオで、クラスター発生する環境「ハコ」に、感染者が入ると言うことなのではないでしょうか。

であるなら、パチンコ店もクラブもキャバクラも、カラオケ店もスナックも、ライブハウスも閉めてしまえばよい、ガチガチの対策をして、全員マスクとフェースシールド、なんなら宇宙服を着て営業をすると考えるのではなく、なぜそのような場所に人が無理をして入ってしまうのかを考え、対策しないと意味がありません。運が良いか悪いかだけに、その店がクラスター発生源になるかならないかなんて、余りにも前近代的過ぎます。

前近代的な傾向が強まると、意味のない儀式(要するにインチキグッズの数々)が広まったり、生贄(感染対策に乗じて、普段の偏見意識が高まる。特に人種差別、男女差別と言った社会的な属性に対して)が必要となってしまうのです。ワイドショーやSNSには生贄探しを直ぐに見つける事ができるでしょう。

こう書くと聞こえてきそうです。「発熱もない、無症状の感染者が、そのような場所には選択的に集まるからだ」と。

でも今一度よく冷静に考えて下さい。そのような無自覚、無症状の感染者はどの場所でも現れ、そして彼らの行動を抑制するには、結局100%に近い(80%以上ですか)ほぼ全員の行動規制をするしかなくなるのです。それはこの3ヶ月大変な事で、短期的にしかできないと分かったはずです。

もう無症状の感染者の行動抑制は諦めるしかないと言うのは、皆さんも分かる頃ではないでしょうか。
これからは相手を信頼し、リスクを共有して生きること、キッパリと仕事を休める、キッパリと断ることができる社会にするのが、一番の感染対策ではないでしょうか。

クラスター発生する場所をしらみつぶしに探して、締め切っても、どんどん見えない場所にクラスター発生する場所は移るだけで(地下に潜る)、何の対策にもならないのです。

正直に告白します。僕も以前は、少々体調が悪くても、薬を飲んで無理をして診療をしていました。30歳の頃、抜歯後の高熱が下がらず、解熱薬の坐薬を何度も入れて無理をして働き続けました。その結果、大腸内視鏡をしている途中で、急に視界が暗くなりそのまま倒れてうわごとを言いながら、自分の働いていた病院に入院しました。入院してからも、なぜか高校時代の友人に、5年ぶりに電話をかけまくりよく分からない事を言っていたそうです。つまり僕はせん妄(錯乱)していたのです。

今や一人開業医。体調が悪くても誰も変わってくれません。それでもこれからは、「今日は体調不良のため休診」と正直に休むこと、そしていつ休んでもきちんと予約のスケジュールをこなせるように予備日を作っておくようになりました。

今まで常識的に働いていると思っていましたが、無理をして100%働いていたことがよく分かります。これからは仕事の仕方と時間の使い方も考えよう。

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