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2019年4月21日 (日)

言わなくてよい一言と後悔

何年も鎮静と緩和ケアに関わっていても、現場に立たされたときのプレッシャーは大きい。最近もつい家族に言わなくて良いことを言ってしまった。「もう苦しんでいないですよ」「薬で何とかなるものではありません」でも本人はともかく見ている家族には苦しそうな最期の数時間だった。

つい言わなくて良いことを言ってしまったあと、「わかりました、私のできるやり方で何とかします。覚悟を決めて何とかします」と答えて、睡眠薬の点滴を始めた。5分もしないうちに、呼吸は安らかで、いかにも苦しくなくなった。どうして何も言わずにすぐにこうしなかったんだろう。

本人にも最期に苦しんだときは、必ず楽にしてくれと言われ、家族にも、苦しんでいます、苦しみだけはとってやってくださいと言われながら、どうして今になっても躊躇する自分がいるんだろう。専門的な知識を持ち、ガイドラインも作っているのに、現場ではやっぱり無力です。

「言わなくても良いことを言ってしまった」自分に自己嫌悪します。人の生死に関わっていると、数ヶ月に一度「ああ、この日のことは一生忘れないだろうな」という日を迎えます。最近もそんな日になってしまいました。一生忘れないでしょう。「一生忘れない瞬間を感じる」そんなときありますか?

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