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2017年2月20日 (月)

グリーフケアとしてのクリスマスコンサート

開業以降、毎年大切にしている日があります。クリスマスに行っている、コンサートです。幼少からバイオリンを弾き、今もアマチュアオーケストラに参加し、音楽は私にとってとても身近なものです。ホスピスで働いていた時も、季節のイベント時には、ボランティアの方々と一緒に、小さなコンサートをしていました。
ホスピスでコンサートをしていたときには、入院している患者さん、ご家族のために演奏していました。とても喜んでもらい、私にとっても特別な時間でした。開業後も、音楽を通じて何かしら普段診療している皆さんとつながりを持てたらと思っていました。
そこで、年に1回、患者さんを看取った家族(遺族)を招待し、クリスマスコンサートを企画したのです。バイオリンは一人で弾くと映えない楽器です。そこで、パートナーとして、連携している訪問看護ステーションすまぁとの原田三奈子さんに伴奏をお願いし、もう4回のコンサートをしました。
残された家族と残された医療者が、同じ時間を共有することで、悲しみを超えて新しい関係を作ることは出来ないかと思い続けています。コンサートは約30分、5-6曲のクリスマスソングとポピュラーソングを演奏します。アンコールの最後は恒例の、葉加瀬太郎、情熱大陸で締めくくります。演奏はキャンドルを灯したやや暗めの照明の中、曲の合間に私や原田三奈子さんがスピーチをします。クリスチャンの原田三奈子さんは、毎年参加したそれぞれの心に、温かい光が灯されるよう、言葉を選んで語りかけます。
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昨年(2016年)からは、原田三奈子さんの父上、田中謙司氏が作ったドレススーツを着させていただき演奏しています。2017年の冬からは、会場を訪問看護ステーションすまぁとのデイサービスから、近くのピアノ教室(クラヴィアビッテ)に移しました。参加する家族も増えてきたため、入れ替え二部制にしました。2017年12月は、神戸新聞の取材も受けました。
すまぁとの訪問看護師、リハビリのセラピスト、訪問薬剤師の方々も集まり、在りし日の患者さんの思い出話と、共に苦労した看病を振り返り、死別の喪失感を慰め合い、そして残された者同士これからもこの町で生きていくことを確かめ合います。
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かつて勤務していたホスピスでも、遺族会は行っていました。亡くなってから1年から1年半経過した遺族にハガキを送り、休日の半日を茶話会として開催していました。私も毎回参加し、遺族との語らいの時間を過ごしていました。しかし、参加した遺族同士の交流は全くといって良いほどありません。同時期に入院していたはずでも、患者さん同士、家族同士の交流はほとんどないのがホスピスでは常でした。なので、遺族会中、医師や看護師と話ができない遺族が、ポツンと黙って座っている様子に、私は申し訳ない気持ちになりました。少しでも多くの人達と語り合いたいと思っても、一人一人は、長く自分達の話をしたいのです。
在宅医療の場に移り、遺族会を考えたとき、同じように家族同士の交流はないだろうと考えました。そこで、意義のある会にしようと、コンサートに30分、終わった後のお喋りの時間に30分の時間をとる、今のスタイルになりました。
毎年、案内状を送り、出欠とメッセージ、そして、今後案内状を送るか否かについて返答を求めています。ハガキの返信を見ながら、色々な事に気付きました。毎年必ず来ていた遺族から、「もう私達は卒業します」と欠席の返事があったり、私がとっても親近感を感じていた遺族からは、「欠席、今後の案内は不要」との返事だったり、看取りの苦労を分かち合った遺族からのメッセージに、「このような案内は私達の悲しみをさらに深めます。今後案内は送らないで欲しい」と書かれていたり、時間の流れと共に人の心が変わっていくことも悟りました。
また毎年参加し、「このクリスマスコンサートを心の支えにしている」と話して下さる方、大切な人を亡くし家でふさぎ込んでいたが、「久しぶりに外出し、笑う時間がもてました」と涙ぐみながら笑う方、「あの時の子供が(父が若くして亡くなり残されたお子さん)もう大学を卒業するのです」とうれしい報告をして下さる方もいらっしゃいます。
時には、悲しみが深く、うつ、不眠、ひきこもりになってしまった方々を、コンサートでの出会いをきっかけに外来の診療に誘うこともあります。私の外来にも、死別後残された家族の方が増えてきました。
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音楽の力は大きくて、私は医師という社会的な役割を超えて、家族(遺族)の方々とまた新たな関係を築くことができるのです。そして、看護師、セラピスト、薬剤師と、多くのご家族との心にも、確かな橋を架けることが出来ます。
よく遺族のケア、グリーフケアと言われますが、医療者が医療者の顔のままケアの手を差し伸べるよりも、一人のアマチュア音楽家として、残された一人一人を繋ぎ、過ぎ去った時間を慈しみ、そして私も含めたそれぞれがこれから生きていく力を生むクリスマスコンサートを、私は大切にしています。

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