終末期鎮静(クローズアップ現代 1月19日)の番組出演について
緩和医療の分野では、1990年以降世界でも、日本でも終末期の耐えがたい苦痛に、鎮静が実施されてきました。しかしその方法も、どのような患者に適応するかもまちまちで、施設により随分と様相が違っていました。そして、2015年の論文では、国内のどの臨床現場でも15%前後のがん患者が、終末期の鎮静を受けていることが分かりました[1]。
また、安楽死との区別も明確ではなかったことから、鎮静の適応、治療の方法を整備するべく、日本でも日本緩和医療学会から2004年ガイドラインが作られました。現在は2010年に改訂されたガイドラインが、Web上でも公開されています。(私は改訂の委員に加わりました)
ガイドラインが公表されてから、12年が経過しましたが、まだその実際の方法については、報道されたことはなく、学会で話し合われていても、各施設で実施されている状況が具体的に見えてこない現状でした。私自身も色んな施設を取材し、随分とやり方に相違があることも分かりました。またガイドラインでは明確に概念を整理していても、実施している現場の医療者にとっては、様々なジレンマがあることも分かり、このブログ上や講演でも述べてきました。(ブログの講演録(終末期の鎮静 本音と建て前)、ブログ記事(鎮静と安楽死は区別できるのか))
また、がん患者が家で最期まで過ごすようになり、安全に自宅で鎮静を実施する必要もでてきました。また自宅で緩和ケアを実施している医療者は、緩和ケアの専門家ではないこともあり、鎮静に至るまでの、順序立てた思考プロセス、薬剤の選択と投与方法に相当差異があることも分かってきました。そのため、まず自分自身の実践を発表し[2]、また今回NHKの取材に応じ、本人、家族とのやり取り、鎮静に至るまでのチームでの意思決定過程、鎮静の方法について収録しました。
普段実践している緩和医療、ケア、チーム医療の実践を収録し、考えを述べました。(ガイドラインに準じたプロセスで治療を実施しています)
ずっと終末期のがん患者の耐えがたい苦痛と向き合い、手を尽くしてもなお緩和できない苦痛に、鎮静を実施してきました。どれだけ緩和医療、ケアが進歩してもやはりまだ終末期の特に最後の数日の苦痛が緩和できない現状を、実感してきました。
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