患者から「早く死なせてほしい」と言われたらどうしますか?
この度、2年間書きためていた文章を一冊の本にして発売することとなりました。
タイトルは親友の箱田高樹さんのアイデアで本の中の質問の一つからつけました。かつて仕事で苦労を共にし、親友でもある金原出版の吉田真美子さんと二人三脚作る事が出来ました。心から感謝してます。また本の内容の日本語校正は、しんじょう医院の事務水上久仁子さんに協力して頂きました。このブログも含めて、私の著作物の全ては水上さんが校正をして下さっています。
序文の一部
2008年頃から、緩和ケアには追い風が吹き、がん患者を診療する病院では緩和ケアを提供すべし、という風潮が広がりました。
その頃から私も、ホスピスで身につけた緩和ケアを広めるにはどうしたらよいのかを考えるようになりました。内科や外科といった一般的な診療をする医師や看護師に、どうしたら緩和ケアを伝授できるかを考えました。そして多くのマニュアル、ガイドラインを作る仕事に関わるようになりました。「取っつきやすい緩和ケア」を目指していて、「わかりやすい」ことと「すぐに現場で使える」ことを重視しました。
こうしたマニュアル、ガイドラインは確かにわかりやすいものではありましたが、同じようなマニュアルを、レイアウトやフォーマットを変えて何度も違う出版社、違う媒体で発表することに、やや嫌悪感を感じるようになってきました。「痛みにはオピオイド」、「倦怠感にはステロイド」といったまるでカルタ取りのような一対一の対応で、緩和ケアを実践する底の浅さが目に付くようになってきたからです。
「わかりやすい」緩和ケアは確かに、非専門の方々に広めていくには大切なことですが、もっと深遠な考え方の基盤になることや、もっと広い視野から人間と病を考えることも必要なのではと思うようになりました。
一見「わかりにくい、すぐには現場で使えない」緩和ケアであっても、この本を通じて一緒に皆さんと考えることで、もっと基礎のしっかりとした緩和医療学になればと思い、本をまとめることとしました。この本は、これから緩和ケアを学びたい、または緩和ケアをより深めたいと考える医師や看護師の方を対象に書かれています。しかし、患者に接する家族や他の医療従事者にも是非読んでもらいたいと、普段の診療を終えてから深夜に、移動中の新幹線の中で、と時間をやりくりして書いてきました。今の自分の中にある緩和ケアを限界ぎりぎりまで深める努力を私自身に課しました。どうか皆さんの心に届くことを祈ります。
目次
オリエンテーション
緩和ケアをめぐる10の提言
- はじめに 苦悩する患者との向き合い方
- 1)過去の概念を超えろ
- 2)症状の最小化よりも、QOLの最大化を
- 3)薬物では新しい力は生まれない
- 4)三位一体の苦痛に対処せよ
- 5)自分の直感を高めよ
- 6)安心を処方せよ
- 7)特別な一日を見逃すな
- 8)自分を割れ
- 9)社会的な役割を演じきれ
- 10)人に対する驚きを持ち続けろ
- 痛みの治療 最初の対応・痛いと言わない患者・医療用麻薬の使い分け、神経障害性疼痛、呼吸困難・吐き気、腹水、食欲不振 食べる悩み・輸液、倦怠感、不眠、せん妄
2学期 鎮静と看取りの前
- 鎮静 鎮静の説明・鎮静が必要な方へ、死なせてほしい、死の経過
3学期 コミュニケーション
- コミュニケーション 緩和ケアって何?・がんの告知・化学療法の中止・余命告知・家族ケア、患者の自殺、民間療法、医療者のバーンアウト
終業式の言葉
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