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2014年12月

2014年12月30日 (火)

レセプト道場 エピローグ シャーマンドクター

しんじょう医院のホームページで、この1年間在宅医療のレセプトに関するレクチャーを、事務員と共に連載してきました。無事1年間の連載が終了しました。

関心のある方はこちらからどうぞ。リンク。
私のお金や医療に関する考えについても述べました。こちらにも転載します。
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シャーマンドクター
この1年間、しんじょう医院での取り組みから学んだ、医療のお金に関することをまとめて公表してきました。在宅の保険点数はとてもわかりにくいと言われることから、調べながら得たノウハウを惜しげもなく公表することは、院長である私と事務員の考えでした。きっとどこかで困っている方がいてその方に届けば良いなと思い、取り組んで参りました。この連載が終わってからも何らかの方法で本ページにたどり着いた方、どうか参考にして下さい。
さて、私は医師として医療技術よりもむしろ、医療の歴史的な呪術性をとても重視しています。特定の物質や技術、薬や医療処置で人は癒やされるのではないと確信しているからです。特に在宅医療のような、先進的な医療技術からは遠い医療現場でもなお、医療の力を最大化するには、この呪術性を利用するほかありません。「(患者自身が)私が分からないことを、この医師は見通している」そして、「先生に診てもらえただけで、何だか良くなった気がします」というのが呪術性の基本だと思っています。
呪術性を損なうものは、あからさまな自分の開示です。私は絶対に普段着では診察に伺いません。必ず白衣を着て、自分自身の社会的な役割を演じます。そして、患者、家族の方とは直接お金のやりとりは一切致しません。銀行の引落や、事務の方を通じてお金をやりとりします。また、あからさまなコスト計算、物品の値切り交渉、医療・衛生物品のコストを最小化することにも関心を示しません。全ては自分の周囲の方々にお任せしています。
もちろん私の仕事を最大限保険点数として換算し医院の経営の安定化には、周囲の人々の格段の努力を必要とします。そんな、私の医師としての信念と医院の経営を支えて下さる事務員の方々と、周囲の人たちに深く感謝しています。

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2014年12月18日 (木)

新しい診療拒否

Large_11034629236_2 開業以降、私も幾度となく患者の入院を拒否されました。

最近神戸でも新しい形の診療拒否がどんどん増えてきています。いや、以前からありましたが、余り大きな声で語られなかっただけです。 通常、診療拒否とは、患者の診察を医師が断ることです。やってはならないこととされています。応招義務があるからです。もちろん診療を拒否する正当な理由があればよいと言われていますが、正当な理由が明確でないため、現場では診療の拒否は難しいと考えられています。
しかし、応招義務については抜け道があります。 家族や看護師、医師からの依頼は簡単に断れてしまうのです。これが新しい形の診療拒否です。一般の市民には、救急車のたらい回しとしてよく知られています。 救急車の受入を拒否できるのは、救急隊員が病院の事務職員に診察の依頼をすることが多いからです。時には医師が直接断ることもありますが、医師にそのようなストレスを与えないために、最近は事務職員が対応することが増えてきました。 救急隊員は患者の情報を事務職員に伝えます。事務職員は、当直の医師に受入の確認をして、救急隊員に受入の可否を通知します。この時、救急車の受入を拒否する理由は、「満床」、「救急外来が混雑していて受け入れられない」様々な理由があります。もちろん、混乱した現場であれば新たな患者を受け入れる余裕はなく、病室がないのに患者を受け入れることもできないでしょう。
ところが、私が病院で働いてきた経験ではそれが全てではありません。余裕があっても断るときも数多く経験してきました。全ての当直医が、救急外来や病棟で同時に多くの患者の対応をしている訳ではありませんでした。自分自身が専門としていない診療科目の患者であったり、得意としていない疾患が疑われる患者は拒否されやすくなります。また、認知症の患者、精神病を合併した患者は特に拒否されます。疾患だけではなく、生活保護の患者でも、唯一空床がベッド差額のかかる個室であれば、「個室料が払える確証があれば、受け入れます」と暗に受入を拒否されることもあります。
ここまで考えてきて、おかしいなと気づくことがあります。医師法第9条には、「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」と書かれています。その正当な事由に、「専門外だから」「得意としている疾患ではないから」「患者が生活保護だから」というのは含まれません。特に、患者が貧困であるという理由で、十分な治療を与えることを拒む等のことがあってはならないと通知が、随分と昔ですがありました。
それでも都市部の病院では、救急車のたらい回し、受け入れ拒否が問題となり続けています。そして、私も度々自分の診療している患者の受け入れ拒否を経験しています。私のように往診も積極的に行いながら患者を診療している立場としては、病院への搬送を拒否されると、患者、家族共々本当に困ってしまいます。途方に暮れながら、患者、家族が望まない在宅療養を手伝うこともあります。
では、応招義務があるはずなのに、どうして患者の受入を拒否できるのでしょうか。
それは、「患者」が「医師」に診療を求めていないからなのです。私がある病院に診察、つまり入院を前提とした診察を求めた場合は、「医師」が「病院の事務員」に診療を求めます。その場合には先方の「病院の事務員」には応招義務が生じていないのは明らかです。「家族」、「救急隊員」が診療を求めた場合も同じ構図が生じるのです。このように現場では新しい診療拒否が都市部を中心に蔓延し、その結果として患者、家族が渋々在宅療養を続けていることもあるのです。
受入を拒否する病院に対してはどのように対処したら良いのでしょうか。顔の繋がる連携をしようと、できる限り私も努力してきましたが、夜間の非常勤(要するにアルバイト)の事務員、病院の全ての医師、夜の当直のアルバイトの医師とはとても顔を繋げることは出来ません。私が診療中の患者と家族を守るためには、私もさらにしたたかな作戦を考えるほかありません。それについてはまた別の機会に述べることにしましょう。

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