チーム受験 「勉強しなさい」と叱るあなたへ
「勉強しなさい」と叱るあなたに贈ります。

ある日曜日の夜のことです。ビールを飲みながら子供と国語のプリントを一緒に勉強しています。学校でたくさんの書き漏れがあり、家で補習をするための準備をしているのです。子供は私立中学1年生です。
一度小学校の低学年の時に、教室の立ち歩きがあること、窓から外をぼーっとみていること、授業に集中できないことで呼び出されたことがありました。幼い頃から自分で集中力を維持する事ができず、気がそれやすいのです。また今でも同じ年齢の子供より幼いともよく言われます。無邪気で純粋でとってもキュートなのですが、やはりやりとりや会話を聞いていると、他の子達より幼いかも知れません。
今でも仕事を終えて家に帰ると、毎日学校のプリントをチェックして、整理して、ファイルして、毎日の時間割を確認して、忘れ物がないようにしています。小学校の時も中学校に入ってからもずっと、ほとんど毎日のように彼の勉強に付き合っています。私は決して、子供の勉強に対して厳しいわけではありません。しかし、彼は一人では勉強できないのです。一人で勉強をさせていると、ふと他事に気を取られて、マンガを読んでいたり、今しなくても良いことをしています。良くある光景です。では、他事をしないように見張るために、横について勉強してるのでしょうか。実はそれだけではないのです。 それはなぜだかわかりますか?
今、彼はひどく英語ができません。びっくりするほど英単語が頭に入りません。 「どうして、さっき教えたことができないんだ」、「昨日教えたことが何で今日になったらもうできないんだ」良くある親子の光景です。私も幾度となく幼い頃から子供を叱っていました。何度叱っても成果がなく毎日が憂鬱でした。子供も何で叱られているのか分からないといった感じでした。
あるとき、調べ物をしているときに発達障害、学習障害のことを読み、もしかしたら彼には学習障害があるのかもしれないと気がついたのです。そして、親がガミガミ叱るとかえって子供をダメにすると気がつきました。子供が、学習障害かも知れないと思ったときには、親もちゃんと子供の思考過程と構造を研究する必要があります。そして、ペアレントトレーニングの考え方を私も学習し、子供への接し方を根本的に変えようと努力してきました。そして、子供を諦めるのではなく、親である私も気持ちを入れ替えて、「この子にとって最高の学習方法を開発しないと」とこの子に合った学習方法を探してきました。10回教えて1を学ぶ、手取り足取り毎日付き合う、間違えても叱らない、できたら一緒に喜ぶ、集中力が欠けてきたら精神を休めるための休憩をとるといったことを毎日毎日積み重ねるようにしてきました。それでも時には我を忘れて叱ってしまい、自己嫌悪に陥ることが度々ありました。 また他の科目に比べて、異常に頭に入る科目もありました。彼の場合は理科でした。ただ、他の子のようにある科目の成功体験が、他の科目の興味をわかせることはありませんでした。
親が、ただ子供の将来に悲観しうろたえれば、子供は自尊感情をなくします。何とか「普通の子供のようにしよう」と力が入りすぎて、怒鳴ってしまえば、子供はうつ状態になります。子供に勉強を教えるようになってから気がついたことがあります。うまくいくかどうかの秘訣は、どのくらい周囲の大人、教師、塾の講師、親が子供を含めたチームになれるかなのです。
最近、医療でも、研究でも、論文執筆でもチームであたることの重要性が強調されています。一つのプロジェクトに対して、一人の卓越した力ではあたることはできないのです。そしてチームは、多職種チームです。それぞれの持ち味と特技を合成したチームが求められています。子供の状態をチームが共同で認識している必要があります。もちろん、以前から、教師と親が面談する時間もあり、今子供が通っている学校にもそのような時間があります。しかし、その場は、子供の学校での様子、成績が親に報告される場で、我が子のように工夫した対応が必要な教育指導方法をじっくり話す時間はそれほどありません。
学習も受験も、自分が子供だった頃とは随分変わったと思います。「自分のことは自分でしよう」ではなく、「自分のことも分担して他人の力を借りよう」なのです。親は、「自分のことは自分でしますから結構です」と言うように教育するのではなく、「ここができません。力を貸して下さい。お願いします」と子供が言えるように教育しなくてはなりません。
現代の受験は「チーム受験」です。母親の愛情と栄養、父親の送迎と英知、そして承認。教師と塾講師は、子供が退屈しない学習方法の開発と、子供の興味の持続する技法を身につけなくてはなりません。そして、もしも我が子のように学習障害がある子供に対応するのなら、さらにテーラード(tailored)された学習方法と日々の学習管理方法の開発が必要なのです。
このようなチームで、学習障害の子供に限らず、それぞれの子供の学習方法を開発するのは、非常に現代的な試みだと思います。必要なのは親の時間と忍耐力です。どうか、学習方法を開発する成功体験を子供と共有して下さい。
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