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2013年4月24日 (水)

今どきの在宅医療16 終末期がんの症状緩和 その2

Bm047web   臨床で患者が看取りの時期に入ると錠剤の内服ができなくなる。在宅医療の治療では、入院と異なり毎日、また1日に何度も診察、評価し指示、治療薬を変更することはできない。そのため錠剤の内服ができないという現実に直面したら、薬剤の中止と、内服できないときの指示を行う。薬剤の中止には、表を参考に症状緩和に関わるもの以外は全て中止する。この時期になると診察の度に処方薬が減っていく。

表 看取りの時期に再検討する薬剤 [14]。

必要だが

投与経路の 1)

変更を考慮する薬剤

以前は必要だったが

中止を検討する薬剤

すでに必要ではなく

中止が勧められる薬剤

鎮痛薬

制吐薬

鎮静薬(鎮静を目的とした薬剤,

もしくは睡眠の確保を目的とした薬剤)

抗不安薬

ステロイド剤 2)

ホルモン補充療法

血糖降下薬

利尿薬

抗不整脈薬

抗けいれん薬

降圧薬

抗うつ薬

下剤

抗潰瘍薬

抗凝固薬

長期投与の抗生物質

鉄剤

ビタミン剤


1)経口投与から,貼付剤、坐薬、持続静注,持続皮下注射への変更など

2)ステロイド剤は徐々に減量すること。特に高用量のステロイド剤を脳浮腫に対して投与しているときには注意が必要である


がん患者に多く投与されている、ステロイド剤は予後が1週間程度の患者には既に食欲不振や倦怠感に対するいわゆるドーピング効果はなくなり、かえって活動型のせん妄の原因になることもあるため、中止していくことが看取りの穏やかさには関連する可能性もある。そして、内服ができないときは「スキップしてよい」のか「1日の間に必ず服用する」のかを家族や看護師に指示する。例えば、睡眠薬は内服できなければ服用しなくても良いが、疼痛を緩和する経口もモルヒネは数時間内服時間が遅れても内服するという指示を、投与中全ての薬剤に対して明確にしておく。
次に、苦痛緩和に対する臨時投与薬を予め処方しておき、家族や看護師に使用する状況を明確に指示しておく(表)。

表 訪問看護師、家族でも使用できる臨時投与薬 (コンフォートセットの例)

症状

薬剤

コメント

疼痛

ボルタレン坐薬  or/and

アンペック坐薬

定期的にオピオイド投与中ならアンペック坐薬10-30mgを投与。

呼吸困難

アンペック坐薬 or/and

ワコビタール坐薬

オピオイド未使用ならアンペック坐薬は半量の5mgとするか、ワコビタール坐薬を投与することもある。

せん妄(不穏)

ワコビタール坐薬 or/and

ダイアップ坐薬

リスパダール液 0.5 mg

なかなか効果が得られないこともあり、繰り返し投与することもある。

気道分泌過剰(死前喘鳴)

アトロピン点眼薬 (舌下投与 1回2-3滴)

医師、看護師によりハイスコ or ブスコパンの舌下投与、注射で対応することもある


また処方をしておくことで、医師に対する緊急時の電話連絡にも対処しやすい。コンフォートセットを処方しておかないと、結局は医師が現場に到着するまで患者と家族は苦痛を体験することになる。また時間外に処方薬がすぐに手に入らない可能性もある。苦痛の原因となる症状や発現時期は予測できないため、内服できなくなった時期を見逃さずに必ず処方しておく。
苦痛緩和の基本薬である、医療用麻薬は内服ができなくなれば、貼付剤、坐薬、注射のいずれかに変更する(表)。

表 医療用麻薬(オピオイド)の投与経路の変更

投与経路

薬品名

投与量

経口・坐薬・経皮

経口モルヒネ (mg/日)

30

60

モルヒネ坐薬 (mg/日)

40

オキシコンチン (mg/日)

20

40

デュロテップMTパッチ・フェンタニル3日用テープHMT (mg/3日)

2.1

4.2

フェントステープ (mg/日)

1

2

ワンデュロパッチ (mg/日)

0.84

1.7

コデイン (mg/日)

180

トラマール (mg/日)

150

300

レペタン坐薬 (mg/日)

0.6

1.2

ノルスパンテープ * (mg/週)

10

20

静脈・皮下

モルヒネ注 (mg/日)

15

30

フェンタニル注 (mg/日)

0.3

0.6

オキファスト (mg/日)

15

30

* 適応外使用 ノルスパンテープは、1週間に一度貼付。非がん性の疼痛が適応。がん性疼痛には使用できない。1週間に一度の貼付なので、在宅医療では医療者が訪問時のみ貼り替えられることから、認知機能の低下した患者、独居の患者に有利である。他のオピオイドとの換算比は、ノルスパン 5mg≒5μg/hr ≒ 経口モルヒネ 20mg/日を参考にした。 (海外マニュアル1海外マニュアル2
注射に関しては静脈ルートの持続的な確保が困難な患者が難しい患者がほとんどであることから、小型の電池式携帯型シリンジポンプや、ディスポーサブルタイプの注入器で持続皮下注射が行われる[4]。
4. Ellershaw J, Ward C. Care of the dying patient: the last hours or days of life. BMJ 326:30-34,2003.
14. Furst CJ, Doyle D: The terminal phase. in Doyle D, Hanks G, Cherny N, Calman K, (ed): Oxford textbook of palliative medicine. 3rd ed. New York, Oxford University Press, 2004, pp 1119-1133.

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