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2012年4月 3日 (火)

医師としてどう育てられてきたか

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2010年に作った、「秘伝 臨床が変わる 緩和ケアのちょっとしたコツ」(青海社)という本があります。毎年小ネタを論文投稿したり、学会発表してきた僕には一番のお気に入りの本です。聖隷三方原病院の森田先生から誘われて、一緒に編集しました。
丁度昨日、関東のとある診療所に1日研修へ行ったのですが、その机にこの本が置いてありました。そこで働く先生から「面白かったですよ」と感想を頂き喜んでいました。
その時に書いた、あとがきですが、その時の本心が書いてあり、備忘録としてここに載せておきます。

あとがきに変えて自分自身が医者としてどう育てられたのかふり返ってみたい。
自分が医者になるためにどんな教えを、周りの先輩達から受けていたか、研修医を多く指導するようになり、今になって良く思い出す。医者になって最初の1年半、 脳外科医として地方の海辺にある総合病院に赴任した。そこでは、手術前から患者の体位をどう保持するのか、そしてメスから小さな道具の一つまで、どんな使い方をするのか、糸はどう結ぶのか基本を厳しく先輩達から教えてもらった。そして、そんな基本的な教えと共にいつも先輩達は、「自分なりのこだわり」を熱心に教えてくれた。そして、一つ一つの「コツ」には、先輩達の経験と思い出、そして成功と失敗の体験が、新しい「コツ」を生み出している事に気がついた。「コツ」と先輩達の「体験」が、脳外科医をやめた今でも自分の中に染み込んでいることに時々気がつく。次の4年半は内科医に転身し、農村の総合病院に赴任した。そこではあらゆる薬物の使い方、レントゲン、心電図の読み方、様々なカテーテルの手技、そして中でも夢中になった内視鏡の技能を学んだ。また同じように多くの先輩達の、「コツ」と「体験」を教えてもらった。
今、緩和医療を専門として思う。自分は後輩にそんな緩和医療の「コツ」と「体験」を伝えているかと。また、大学の医局に所属し、先輩、同僚、後輩が多くいた脳外科医、内科医の時代と違い、緩和医療に従事するようになってから、身近にはほとんど同僚がいないことに気がつく。蛇口をひねれば水が出てくるように当たり前に思っていた先輩達の「コツ」と「体験」が、今はその蛇口すら見つからない。だから、この本に書かれた日本中の先輩達、そして同僚、後輩達の「コツ」と「体験」が、多くの読者にとっての蛇口となり水となり、そして困っている患者、家族に注がれることを心から望む。

2010年5月
新緑のまぶしい六甲山の麓
社会保険神戸中央病院にて

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