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2012年4月18日 (水)

今どきの在宅医療2 地域って何?

最近、地域包括ケアとか地域医療とか言われますが、実際に長く病院で勤務医として働いていると、自分の職場の住所がどこかということ以上に、あまり地域を感じることなく仕事を続けてきたように思います。患者の住所に一番近い病院が地域の病院なのかと思うほどです。院長に「地域医療に貢献し」と言われても、地域という相手が見えない以上、何に貢献したらよいのか分からず、それならひとまず病院に近い住所の患者さんには少しだけ優しくする、というのが僕のプライベートな地域医療でした。

そして先週から、開業準備のため、訪問診療を中心に活動している2つのクリニックで働かせてもらうことになり、ついに「今どきの在宅医療」がスタートしました。そして、10年「がん」「緩和ケア」「終末期医療」に関わっていた自分には見えなかった視野が急に開けてたのです。

まず昼間の明るさ。休日は外に出て日の光を浴びているのですが、勤務医時代の仕事では、平日昼間の贅沢な日の光は、当直明けか学会出張中の短い時間にしか感じることができませんでした。どうして休日と平日では日の光の柔らかさがちがうのでしょう。まるで日の光のにおいまで違うように感じます。子供の頃に感じたその日の光のにおいが、訪問診療に回るだけで、鼻に届いてきます。実は、昔々医者になってからしばらくたばこを吸っていた頃、病院内でたばこが吸えなくなったため、よく自転車置き場の隅っこで、色んな職員と日の光を浴びながら一服していました。あの時に感じた日の光も丁度今感じているやわらかさと同じ。たばこは身体に悪いし何の役にも立たないけど、あの贅沢なひとときの副産物だけは魅力的です。

軽自動車に乗り、町を走り、クルマを停め、患者さんの家まで歩く間に、町のにおいを感じます。そうですよね、地域って人なんですよね。人の気配、幼稚園の音と園児の声、訪問したマンションで通り過ぎる住民の人たちとあいさつをする、桜並木を見上げながら太陽のにおいを感じること。こういう通り過ぎていく風景の中にも確かに人の気配があり、その風景が気候と混ざりあい、気温と湿度が心地よく自分の身体に届く。神戸に来て10年、やっと地名を見ただけで頭の中でにおいが広がっていく感覚を感じました。自分が生まれ育った名古屋なら、地名を見ただけでにおいが広がったのに、どうしてこちらに来て長く暮らしているのに、無味無臭なのかやっと分かりました。地名とそこの人々、そして気候。さらに自分の新しい気持ち。それらが混ざり合ってやっと僕にとっての地域が身体の中に染み込んできたのです。

この、新しい仕事を始めて得た快感は、在宅医療の魅力と言うよりも、ただ昼間の生きた町のにおいを感じている幸福感なのでしょうか。新しい職場で感じている新鮮な緊張感と町のにおいとの融合が、これからの活動の基礎となります。でも、町のにおいは心地よいものばかりではありません。この話についてはまた後日。

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