ご家族へのエール 生活を失わないように。
最近、がんの再発が診断された患者さんの家族から相談を受けた。「これから何に気をつけたらよいか。」真剣に考えていたらいくつかの言葉が心に浮かんできた。「まず生活を失わないことです。」どんなに不格好でもどんなに不自然でも、どんなにわざとらしくても今までの生活を続けるというひたむきな努力が大切だと思います。からだに悪いものを摂るのはやめた方が良いと思いますが、今までの生活を続けるという観点で考えましょうよ。
これから病気の治療に入ると、良いときも悪いときもあります。それでも生活という足場と、病気という足場の二つを持っていないと、病気の足場がぐらついたときには一気にバランスを崩してしまいます。それに病気の治療そのものが、生きるための目標そのものになるのはやはり心の全てが「病人」になってしまいます。「病人」になってしまえば、家族との生活や、自分が大切にしていた生活が価値を失ってしまったように錯覚してしまいます。
だから、どうか不格好でも、泣きながらでも、落ち込んでいても、気が乗らなくても「今までの生活」を何とか続けるようにしましょうよ。そして病気にどうするか考えましょうよ。ボクも病気の方は考えますから。そんなことを静かに話していた。でも全く準備した言葉たちではない。
ご家族はまだ心の衝撃は強くどこまで言葉が届いたか分からないけど、「腰痛の時に歩くと不格好だけどそれでも前に進むために工夫しますよね」と話すと腰痛持ちのその方には届いたようだった。
帰り道に今日お昼にあった別の患者さんを思い出した。その方はいつも明るく笑って、毎週インターネットで見つけた健康食品やら民間療法を嬉しそうに教えてくれる。そしてずっと玄米菜食、リンゴ、トマト、ざくろといった体にいいものをとり続けているとか。そしてその話しをふと思い出し、気がついた。その食品に病気を治す不思議な力が備わっているのではない。それは科学的に、栄養素が免疫やがんに何かしら影響があると考えるには、余りにも遠縁過ぎる。風が吹けば桶屋が儲かるの話しと同じ。「からだにいい」と信じた食べ物を食べることそれはすなわちボクの話していた「生活」を続けると言うこと。そして自分の決めた「からだにいい」ことを毎日ひたむきに、病状が悪くても良くても続けることそれが大事なのかもしれない。
「病気にいい」「がんに効く」と言われている食べ物は一見すると、科学的には根拠がないようにみえても、生活をどんなに不格好でも、泣きながらでも、落ちこんでいても、気が乗らなくても送っていくその下支えになっているんだと気がついた。がんの苦しみや不安、悩みに襲われても、毎日愚直にの食事に気を配るのは、「生活」を失わないための大切なことなんだと気がついた。そのご家族にも、昼にあった患者さんにも今度会ったときには、「信じて続ける何かを見つけて、それを続けて下さいね」って言おう。
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