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2010年6月24日 (木)

「降りてきた言葉」「いつまで生きられますか?」

昨日は、大切な同僚の最後の出勤日でした。本当に残念ですが、新しい門出を心から祈っています。普通にいつも通り一日を過ごし、また色んなインスパイアを得ました。それに学会が終わってから、またどういうわけか頭が冴え渡り少し聞こえなかった声のようなものが、良く聞こえるようになりました。(これは幻聴ではない!)
僕の言う「声」というのは、患者さんや家族から何かしら質問や問いかけを受けたとき、何の準備もせず落ち着いたリラックスした気持ちでいるときには、どういうわけか、どこから考えたのかさっぱり分かりませんが、とにかく「応えるべきこと」が勝手に心に浮かんでくるんです。それが心の映像です。

ある40代の女性の方でした。まだ下のお子さんは小学校6年生。MSWとナースとの話を終えて最後に僕の診察室で話す時間になりました。
いつも最初に何から話そうかとその方々の顔を見てから考えるのですが、自然と言葉が出てきました。
「いろいろと大変な毎日みたいですね。今何か最初に聞きたいことがありますか。」
すると、「私はあとどれだけ生きられるのか教えて下さい。」と言われました。そしてその言葉が終わると同時に大粒の涙。
今までの医者達には、やはり限定した余命を聞かされておらず、ご家族はどうやら医者から説明を受けているようでした。

「あとどれだけ生きたいですか?まだまだやりたいことはいっぱいあるんでしょうね」
「まだ息子も小さいですしまだまだ、やらなきゃならないことはいっぱいあるんです。」
「あとどれだけと、何ヶ月、何年と話してもほとんど当たらないので・・・いつも困っているんです。実のところ」
「はぁ、そんなものなのですか。」
「最近ね、(ここからは全く準備のない言葉の数々)いろんな病人の方と毎日一緒に話していると思うんです。昨日と同じ今日、今日と同じ明日そんな風に皆さん生きているんですね。そして今日よりも明日いい日であって欲しいって。」
続けて、「僕だってそうです。健康で働いて未来を見ているように見えますが、昨日と今日、今日と明日。せいぜい今週。そんな風に毎日を過ごしているんですよね。」
「そうですよね」
「僕の経験や得た知識からもし『あなたは来週亡くなります』って話しても、何からしたらよいのか患者さん達はわからないかもしれないですね。いつ亡くなるか知っていても何も変えられないかもしれないって自分のこともふまえてそんな風に僕は思うんです。」
(あまりおしつけないように)
「だから、いつまで生きれるか知りたい気持ちはとってもよくわかります。でも昨日と同じ今日、今日と同じ明日を生きられるようにどうしたらよいか、一緒に考えたいですね。それに今日より明日よくなる方法を考えられたらもっといいですよね。」

そんな風に話しました。今まで見聞きした色んな事の影響はあるかもしれません。毎回初診の患者さんとは話すことを余り準備せず話しを始めます。こういう言葉が降ってくる瞬間は本当に不思議で、自分の肉体を誰かが使っている様な気がしてなりません。それは、初診できた患者さんやその家族のご先祖様なのかなと勝手に空想したりして。とにかく自分の経験から生み出された以上の何か特別な力を感じることが日常できます。そんなときに、ああ、自分はこの仕事を誰かに授かり、使われ、そしてまだ言葉が降ってくる間はここにいたほうが良いのかなって静かに思いました。

ありがとう、40代の女性の初めて会った患者さん。また自分の心の中に浮かぶ映像から、自分が学びを得ました。

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