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2009年12月29日 (火)

本当の恐怖

今日の1日の終わりにとある患者さんから尋ねられました。
目には涙。いつもにない真剣なまなざし。
とても控えめな方なのに、いつもよりも饒舌だなとおもった瞬間のこと。

「死ぬ前には苦しんで、そしてどうにもならなくなるでしょうか。」

その瞬間、僕の頭の中は左脳と右脳の二つに分かれる。
左脳では、終末期のがん患者がどのくらい耐え難い苦しみに襲われ、そして薬物で鎮静(眠らせること)を必要とするのか。
どんな情報を述べればよいのか。
どんな言葉が一番「正しい」のであろうか。

右脳では、この方と僕は何を約束したらよいだろうか。
どんな言葉が心をなぐさめるのだろうか。

左のエビデンス好きな医師と、右の人が好きな医師が二人でしばらく論争。

「ほとんどのがんの患者さんは苦しみませんよ。そして眠る時間が長くなるんです。」
「でも、もしあなたが違う道を進んでしまい、苦しんでしまったら僕が手伝いましょう。」

これだけの言葉で十分心に届いた様子。そしてその日はそれ程遠くないことをはっきりとわかり合う目。
必ずこんな話になると患者さんは自ずと手をのばす。そして老若男女かまわず必ずその手を取る。

「約束しますから。」

自分に課せられる責任の重さも感じながらも、自分の言葉が相手に届く確かな実感。こういう会話を毎日のように交わしていても、毎回のように感動する。そして、いつもその患者さんを通して感じる何かしら大きな存在に(守護霊とかいうんでしょうかね)自分が「この人を手伝いなさい」と言われている気がする。

だから傲慢になる心のヒマも隙もない。

知っている知識(エビデンス)と、患者さんと大きな存在からの頼まれ事とが合わさるだけ。自分は天の道具のようなものだなっていつも思う。崇拝されたり、僕自身にすがられることは滅多にないのもそんな理由なのかもしれない。

好かれることはあってもすがられない存在でいたい。
別れのつらさよりも出会いの喜びを感じていたい。

そんなことを瞬間的に考えた仕事納めの今日。
年賀状刷らなきゃ・・・

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