2023年8月30日 (水)

新たなケアを探して

昨年から僕が民間のNPOの活動に参加するようになりました。 色々な知識による、特に最近の臨床心理学の影響が大きいです。自分が提供しているケアが専門職セクターによる特殊なケアであり、これだけでは世界、せめて自分の関わる人たちのケアもよくならないと分かったからです。 一般病院を辞めたときも緩和ケア病棟を辞めたときも同じことを感じました。専門的なケアを洗練していっても、世界は良くならない。それならと活...

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2023年4月 2日 (日)

お母さんらしく逝かないでほしい 後編

死に逝く母は一体何を求めていたのだろう。同じように死に逝く人たちに言葉を求めても、返事をする力もなくなっていることがほとんどだ。それに、死が近づく相手に、自分が人生において何を求めていたのかと問うには、あまりにも害が大きい。「あなたはどう生きたかったのですか」と問えば、時にはそれまでの相手の生き方をときには否定することにもなりかねない。それでも私は、何を求めているのか知りたいと思い、文学作品に答え...

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2023年4月 1日 (土)

お母さんらしく逝かないでほしい 前編

終末期医療の現場で見える景色は明らかに変わってきた。いや、景色よりも私がより変わってきたのだ。「お母さんらしく逝ってしまったね。」自宅で母を看病した娘が最期の日に言ったことだ。以前の私なら、言葉を素直に受けとめて「どんなお母さんでしたか。」とケアのために、話を続けたであろう。でも今の私は、「お母さんらしく」の「らしく」に妙に引っかかってしまうのだ。この方は、自分が亡くなるその日まで周りを気遣い、家...

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2022年8月 3日 (水)

「半分こ」したお好み焼き

僕の故郷には、お好み焼き屋が多い。2つ年上の従兄が暮らす町内にも、馴染みの店があった。従兄とその店へわずかな小銭を握りしめて行き、いつも一番安い豚玉を1枚、二人で食べるために注文していた。 焼けるのを待っている間、お店のおばちゃんは色々と話しかけてくる。「いくつになったんや」(8歳です)「あんたはどっからきたんや」(名古屋から時々来ます)「そうか、この子の弟のようなもんやな。悪い遊びを教えたらいけ...

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2022年5月18日 (水)

苦い苦いコーヒー

僕は広島に住んでいた祖母の苦い思い出を、今でも忘れることができません。 その思い出は、胃を悪くしていた祖母が好きだったコーヒーを飲ませないように孫として注意していたことです。「ばあちゃん、コーヒーは体に悪いから飲まないで」と言ったとき、祖母は「少しぐらいならええんよ」と苦笑いしながら飲んでいました。僕はまだ幼くその言葉にも力はなく、子どもが覚える原初的な感情であろう「ずるいこと」を祖母はしていると...

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2022年5月14日 (土)

消える原稿

今までに幾度となく人前で講演してきました。話すことを準備をし、予め調べてそして内容が固まってきたその時、ファイルが消えてどうにもならなかった事が何度かあります。2000年前後のMacは気まぐれにフリーズしその瞬間作っていた文書が全て消えるというのは、当たり前の事で、「保存」「保存」と一行書く毎にショートカットキーを押していました。今でも手が自然に物書きやプレゼンをしているときに、一呼吸おく度に「保...

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2022年5月 2日 (月)

自分の指を見張る。僕のポリコレ。

昨年、遠い親戚のある方を、僕が医者として最期を看取りました。親戚なので、僕も通夜に参列しました。その時、集まったその方の家族に、何故死に至ったのか、医者として誠実に説明しました。 その時、自分では全く気がついていませんでしたが、息子からこう言われたのです。 「人に説明するとき人を指さす癖は止めた方がいい」と。僕は驚きました。自分がそんなことをしているのに気がついていなかったんです。それ以来、自分の...

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2022年4月17日 (日)

「体を重ねることって」

僕が18歳との時、初めての女性の感触に夢中になった。一つ年下のガールフレンドは、クリスマスイブの夜に、どちらから誘ったわけではないのに、とても自然に一つのベッドの中にいた。 僕はどう行為を進めて良いのか分からず、じっとしているだけだった。僕の知識はせいぜいポルノビデオで、力強い男がただ女をねじ伏せて、やがて女は官能にいたるそんな筋書きばかりだった。 自分にはそんな力強さもなく、またねじ伏せるような...

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死を憧れていた彼女

彼女は最初逢ったときから、気になることを言っていた。「人間が死ぬことは自分の意思でどうにでもできることなのよ」と、死に対する憧れを話していた。 「ねえ、この本読んだ?この本の主人公はとっても美しい死に方するわよね。少しずつ身体と魂が透明になっていく感じがいいわ」 いつも彼女は家に帰ろうとしなかった。家には自分の居場所がなく、遅い時間まで広い公園や、自分の通院している名古屋の病院の大きな待合室の片隅...

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2022年3月29日 (火)

「アドバンスケアプラニング」ロボット

ACP(Advance Care Planning)とは、将来の変化に備え、将来の医療及びケアについて、 本人を主体に、そのご家族や近しい人、医療・ ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、本人による意思決定を支援するプロセスのことです(日本医師会の解説より) まずアドバンスケアプラニングなど、不確実な近い将来に対してどう医療者と患者が向き合うのかとても関心がもたれていることと思います。未来に補助線...

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